3. 非常に有望な破壊的イノベーションが期待はずれに終わり、熾烈な競争または既存企業の参入を招いてしまう状況を、どのようにして見分けるのか
破壊的新規参入企業が成功するように見えて、最終的には既存企業が勝利するような状況が存在する。非対称性を理解すれば、こうした状況を見極めることができる。次のような状況下では、急成長段階の後に、熾烈な競争のバトルが起こると予想される。
- 業界環境のせいで、既存企業にとって「逃走」が受け入れがたい選択肢になるような場合
- 新規参入企業が早い段階で差別化を実現するようなビジネスモデルやスキルを開発できず、その結果既存企業にとって「取り込み」が当然の選択になる場合
上位市場への逃走が、既存企業にとって自然な選択になるのは、ハイエンドに十分な規模の魅力的な市場が存在する場合に限られる。次のような状況では逃走できないことがある。
- 企業が満たされない顧客のいる次の上位層に進出する能力をもたない場合
- 満たされない顧客が存在しない場合
- 既存企業がコスト構造やビジネスモデルのせいでローエンドから離れられない場合
既存企業が逃走できず、早い段階から反撃することを選択すると、新規参入企業は「非対称な動機づけ」という盾に後ろに隠れられず、非対称なスキルを磨く時間がなくなる。その結果、既存企業と新規参入企業の間で、市場シェアをめぐる熾烈な戦いが勃発するだろう。
破壊的新規参入企業が既存企業と同じような方法で利益を上げているか、よく似たプロセスを持っていると、既存企業は新規参入企業に反撃する強い動機づけを持つようになる。したがって既存企業が魅力を感じないビジネスモデルを開発できなければ、あるいは破壊的事業に見合った独自のスキルを磨けなければ、新規参入企業は既存企業に反撃の隙を与えてしまう。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社