無消費者、満たされない顧客、過剰満足の顧客はすべて、新たな企業や新たなビジネスモデルが誕生するチャンスである。加えてイノベーションは、それが起こる環境とは切り離せない。市場外の要因、特に政府とその監督機関は、その環境を形づくるうえで極めて重要な役割を果たしている場合がある。
イノベーションが成功する環境には「動機づけ」と「能力」の2つの要素が存在する。「動機づけ」とは、イノベーションを促す市場インセンティブを指し、「能力」とは、資源を獲得し、その資源を製品・サービスに変換し、顧客に提供する能力を指す。企業がイノベーションを行う動機づけと能力を併せ持っていれば、多くのイノベーションが開花する。逆に動機づけが不足しているか、能力を妨げるような市場状況では、イノベーションは抑え込まれてしまう。
政府をはじめとする市場外のプレーヤーは、業界のプレーヤーの動機づけまたは能力に影響を与え、そうすることで業界の環境を変化させ、イノベーションに貢献する、またはイノベーションを阻害する環境を生み出す場合がある。
動機づけ/能力の枠組みを用いるには、次の3つのステップを実行する。
- 企業の現在の動機づけと能力を書き出して、現在の環境がそれぞれの種類のイノベーションにとって望ましいかどうかを考える。望ましいものでない場合、イノベーションを阻害している主な障壁を見極める。
- 市場外のプレーヤーが、企業の動機づけや能力に影響を与えるような措置を講じているかどうかを判断する。
- そのような措置が、イノベーションへの主な障壁を取り除くためのものかどうかを判断する。もしそうであれば、その措置はイノベーションを促進すると期待できる。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社