経営者はトップダウンで意図的に戦略を指示することもできれば、ボトムアップで創発的に湧き上がってくる戦略を採用することもできる。企業は創発的な戦略を生み出す力を促すことで、適切なターゲット市場を発見しやすくなる。市場がどのように進化していくかはわからないが、創発的な戦略プロセスを用いれば、市場のシグナルを読み取り、それに合わせて戦略的行動を調整していける。
経営幹部に聞き取りを行ったり、企業の行動を観察したりすれば、企業が創発的戦略のプロセスを採用しているかどうかがわかる。次のような点に注視しよう。
- 企業は思い込みから行動するのではなく、学習し適応できるような事業体制を構築しているか?
- 大規模な先行投資を行う企業は、固定費を賄うために大口顧客や量販市場の顧客を獲得せざるを得ないことが多い。
- 先行投資を少額に留めておけば、柔軟な対応が可能になる。
- 製品アーキテクチャが柔軟に構成可能なら、創発的要因に適応しやすい。
- 企業は「わかっていないこと」を認識し、未知を既知に変える手順を持っているか?
- 経営者は「もしXとYが起これば、5年以内に10億ドル規模の市場が生まれるでしょう。XとYが起こる確率は、次の方法で検証します」というように発言すべきである。
- 企業はある程度まとまった金額を投資した後、前進がはっきり目に見えるまでは、追加投資を控えるべきである。
- 調査の行き届いた、入念に準備された事業計画を持ち、不透明な状況での予測を信じ込んでいる企業は怪しむべきである。
- 市場から明確なシグナルが得られ、勝つために必要な戦略が明らかになれば、創発的戦略から意図的戦略に転換すべきである。
- 意図的戦略は持続的イノベーションを推進する大企業には、非常に有効である。
<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社