ディスク・ドライブ業界の技術革新は、そのほとんどが持続的イノベーション(持続的技術からもたらされるイノベーション)によるものであった。「破壊的技術」と呼ばれる技術革新は、ごくわずかしか存在しなかった。そしてこの「破壊的イノベーション(破壊的技術からもたされるイノベーション)こそが業界のリーダー企業を失敗に追い込んだ要因である」とクリステンセン教授は仮説した。
ディスク・ドライブ業界の破壊的イノベーションを分析するために、ドライブが小型化する要因となった「アーキテクチャーのイノベーション」に注目したところ、次のような破壊的イノベーションの特性が導き出された。
- 破壊的イノベーションは技術的には単純で、既製の部品を使い、アーキテクチャーも従来のものより単純な場合がある。
- 確立された市場では、破壊的技術は顧客の要望に応えるものではないため、初期段階ではほとんど採用されない。
- 破壊的技術は、主流からかけ離れた、とるに足りない新しい市場でしか評価されない。
- 破壊的技術によって新しい用途の市場が生まれるとしても、その技術を導入したからといって既存製品の売上が侵食されるとは限らない。
- 優良企業が、破壊的技術による新しい用途が商業的に成熟するまで待った上で、自分たちの市場への攻勢をかわすためだけにその技術を導入すると、既存製品の売上が浸食されてしまう。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社