正しい戦略を求めるだけでなく、戦略が生み出されるプロセスをマネジメントすることが重要である。戦略の始まりとなる「意図的戦略」と「創発的戦略」は資源配分プロセスを通って戦略の実行に至る。
持続的イノベーションの状況、そして一部のローエンド型破壊の状況では、競争の見通しが十分はっきりしているため、戦略を意図的に策定し実行に移すことが可能である。しかし、新市場型破壊の創生期に、細部まで正しい戦略を持つことは不可能に近い。その状況では戦略を実行するのではなく、有効な戦略が生まれ出るようなプロセスを進めなければならない。
戦略策定の力点は3つある。
- 組織のコスト構造
- 価値基準をマネジメントし、理想顧客からの破壊的製品に対する注文が優先されるように図ること
- 発見志向計画法
- 何が有効で何がそうでないかについての学習を加速させる、徹底したプロセスを用いること
- プロセスの監視
- 意図的、創発的プロセスが各事業の状況に応じて用いられるよう、油断なく気を配ること
上記3つの力点を乗り越えることができた経営者はほとんどいない。そしてこれこそが、優良企業がイノベーションで失敗する理由の一つである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社