イノベーションへの解:第8章 戦略策定プロセスのマネジメント (7)

新事業が有効な戦略を見出す間に「発見志向計画法」を用いれば、試行錯誤を漫然と繰り返すよりも、有効な戦略をはるかに早く、かつ目的を持って生み出す手助けができる。

一般に、意図的戦略の計画プロセスは、表8-1に示す4つの段階を経ることが多い。

表8-1. 創発的戦略プロセスをマネジメン卜するための発見志向計画法
持続的イノベーション:意図的計画法 破壊的イノベーション:発見志向計画法
特徴 パターン認識に基づいてプロジェク卜開始を決定する 数字や規則に基づいてプロジェク卜開始の決定を下しても構わない
段階 1 仮説(将来予測)を立てる 財務目標を打ち出す
2 仮説に基づいて戦略を策定し、戦略に基づいて財務予測を立てる 仮説を証明するためのチェックリストを作成する
3 財務予測を基に投資決定を行う 重要な仮説の妥当性を検証するために、学習計画を実行する
4 財務予測を実現するために戦略を実行する 戦略を実行するために投資を行う

意図的計画法は次のようなプロセスになる。破壊的イノベーションでは、このプロセスを通して誤った決定が引き出されることがある。

  • 第1段階:イノベーターは将来予測を行い、新事業がどのような形で成功するかを想定する。この仮説は、優れた予測理論を基にしている場合もあるが、実際には過去の成功体験に基づいて立てられることが多い。
  • 第2段階:第1段階の仮説を基に財務予測を立てる。意図的プロセスでは、第2段階から第1段階へ戻ってループすることが多い。数字に信憑性を持たせるために、前段階に戻って仮説を修正するからである。
  • 第3段階:財務予測に基づく提案や計画を役員が承認する。
  • 第4段階:新事業を任されたチームが戦略を実行する。

 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社