イノベーションへの解:第8章 戦略策定プロセスのマネジメント (4)

戦略が形成から実行へというわかりやすい順序をたどることは滅多にない。戦略は決して固定的なものではない。

成功者たちがうまくやり遂げられるのは、当初の戦略に欠陥があることが判明した場合に備えて、再試行するための資金を残しておくからである。一方、失敗者は意図的戦略の有効性がはっきりしないうちに実行に移し、資源を使い果たしてしまうことが多い。

新事業の初期段階に上層部が果たすべき役割の一つは、何が有効で何がそうでないかを創発的な事象から学び、学習したことを意図的なチャネルを通じてプロセスへと循環させることである。

創発的戦略を積極的に受け入れる経営者は、すべてがまだ完全に理解されないうちに行動に移ることができる。状況が不変だという幻想にとらわれることなく、変化しつつある現実に対応するために行動することができる。「創発的戦略」という概念そのものが、有効なパターンや一貫性を追求しながら、一つひとつ行動を起こして、何が有効かを学習していくことを意味する。

やがて優秀なマネージャーが、成功する戦略となる、有効なパターンを読み取る。このとき経営者は、資源配分プロセスでフィルターとして用いられる判断基準をしっかり掌握し、戦略策定の流れを意図的に策定する段階にシフトしなければならない。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社