ブランドにもコモディティ化や脱コモディティ化が生じる。ブランドに最も価値があるのは、価値連鎖の「まだ十分でない」段階である。
顧客が製品の性能に不安を持っているとき、周到に練られたブランドがあれば、顧客が必要とするものに近いイメージを与えることができる。複数の業者が供給する同じ等級の製品が、どれも十分以上であることが明らかな場合には、「ブランドがプレミアム価格をつける能力」が失われる傾向にある。
機能性の行き過ぎが生じると「ブランドによる利益を獲得する能力」は、しばしばバリューチェーンの別の地点に移動する。こうした地点は、製品内の性能決定サブシステムにあることが多い。また速度、単純性、利便性が十分でない場合には、小売業者とのインターフェースにあることが多い。このような移動がブランド構築の機会を決定づける。
独自製品を持つ企業のブランドは、製品が最高であったとしても、上方にいる「機能性と信頼性に満足していない顧客」に向かって製品の価値を高める。これが下方の「スピードと利便性、レスポンスが競争における成功の原動力となる、モジュール化された製品」に向かって移動すると、収益性を生み出すブランド力は、最終製品から遠ざかり、サブシステムへ、そしてチャネルへと向かう。
製品の機能性と信頼性が十分以上になると、次に購入や利用の手続さと利便性が十分でなくなる。するとブランドは、これらのまだ十分でない側面を満足させるビジネスモデルを作ったチャネルへと移動し始める。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社