「十分でない」最終製品の設計や組立を行う統合型企業が、魅力ある利益を得られる理由は2つある。
- 製品の相互依存型の独自アーキテクチャにより、差別化が容易である。
- 相互依存型のアーキテクチャを持つ製品の設計と製造では、元来変動費に対する固定費の割合が高く、大きなスケールメリットが働く。
これらのことが大規模な競合企業にコスト優位性を与える一方、新規参入企業にとっては乗り越え難い参入障壁となる。
企業が独自アーキテクチャ製品を競合企業よりも高いコスト競争力で製造できるのは、「十分でない」状況のときである。状況が変化すれば、つまり収益性の高い支配的企業が主流顧客の利用能力を追い抜いてしまえば、このやり方は通用しなくなり、やがてモジュール式が支配的となり、コモディティ化が始まる。モジュール化が進んだ状況で利益を上げるためには、バリューチェーンのどこか他の場所を探さなければならない。
コモディティ化のプロセスは、次のステップで進む。
- 新しい市場が生まれると、ある企業が、十分ではないが競合製品に比べれば願容のニーズに近い、独自製品を開発する。企業は独自アーキテクチャを通じて製品を生み出すため、魅力的な利益を得る。
- 企業は直接の競争相手より優位に立とうと奮闘するうちに、やがて市場の低位層の顧客が利用できる機能性と信頼性を追い抜いてしまう。
- この階層の競争基盤の変化が促される。
- モジュール型アーキテクチャへの進化が促される。
- 産業の非統合化が進む。
- 誰もが同じ部品を入手でき、同じ基準に基づいてそれを組み立てるようになるため、製品の性能やコスト面で競合企業との差別化を図ることが極めて困難になる。
- 機能面でのオーバーシューティングが市場の底辺から始まり、上方に移って高位層を襲う。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社