良い資金は、自己強化的な下方スパイラルを通じて、悪い資金に変化する。このスパイラルは5つのステップに分かれて起こる。このスパイラルに足を踏み入れた企業がその後のステップに進まず、踏みとどまることは極めて難しい。
ステップ1:企業が成功する
必勝戦略が明らかになると、経営幹部は戦略策定プロセスを力ずくで制御して創発的な影響を排除し、その機会を開拓することにすべての投資を意図的に集中させる。その結果、中核事業が成功している間は新成長事業を立ち上げることができなくなってしまう。
投資を集中させることは、この段階で成功するためには不可欠な要素である。中核事業に集中することによって、眼中にない競合企業よりは早く、持続的向上の軌跡を昇るよう駆り立てられる。
ハイエンドの利益率が魅力的であることから、コモディティ化した製品分野で価格弾力性の高いローエンドのビジネスを失い始めても、ほとんど気付かない。また利益率の最も低い製品から撤退し、その分の収益を持続的向上の軌跡の上端に位置する利益率の高い製品から得れば、全体的な粗利益率が改善するため、それで満足してしまう。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社