優良企業が技術革新に直面するとなぜ失敗するのか? それは、技術革新に対するマネジメントや組織的・企業文化的な対応、優良企業の新技術を扱う能力に問題があるからだろう。クリステンセン教授は「新技術に対応するには、優良企業が培ってきたノウハウとは全く別のノウハウが必要になる」と指摘する。
優良企業が失敗する理由は大きく2つ考えられる。
- 組織とマネジメント
- 優良企業の組織構造は、主要製品を設計しやすいように作られている
- アーキテクチャーの技術革新が必要な場合、新たなコミュニケーション方法で連携して働く必要があるが、優良企業の組織構造はその妨げになる
- 能力と根本的な技術
- 優良企業は既存の技術を改良する能力には長けている。一方、新規参入企業は他の業界で開発し、実践してきた技術を持ち込むため、抜本的な新技術の探究に向いている
- 製品やプロセスの問題を解決する上で、過去に蓄積してきた知識と全く異なる知識が必要になると、優良企業はつまずきやすい
一般的に企業は「これまで築いてきた能力」が技術革新によって破壊されるときに失敗し、高められるときに成功する。製品を進化させるような技術改良においては、その業界で実績を築いてきた優良企業は有利である。他方、全く異なる知識体系を必要とする技術改良においては、すでに他の業界などで別の知識体系を蓄積してきた企業に比べると、優良企業は不利である。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社