イノベーションの最終解:序章 (3)

2. 資源・プロセス・価値基準の理論 ー 能力の構成要素

資源・プロセス・価値基準の理論(RPV理論)によれば、資源(企業がもっているもの)、プロセス(企業が仕事をする方法)、価値基準(企業がしたいこと)が合わさって、組織としての強み、弱み、死角を決定している。

  • 資源:組織が購入、売却、構築、破壊できるモノや資産
  • プロセス:組織が資源のインプットを、より価値の高いアウトプット(製品・サービス)に変換するために用いる、確立された仕事のパターン
  • 価値基準:組織が資源を配分する際に参照する基準
図0-2. 資源、プロセス、価値基準
資源 プロセス 価値基準
組織が購入、売却、構築、破療できるモノや資産
例)

  • 人材
  • 技術
  • 製品
  • 設備機器
  • 情報
  • 現金
  • ブランド
  • 流通チャネル
企業がインプットを製品・サービスに変えるために用いる、確立された仕事のパターン
例)

  • 人材の確保育成
  • 製品開発
  • 製造
  • 予算計画
  • 市場調査
  • 資源配分
組織が優先順位づけを行う際に参照する基準
例)

  • コスト構造
  • 損益計算書
  • 顧客の要求
  • 事業機会の規模
  • 倫理観

 
RPV理論によると、組織が事業機会をものにできるのは、その組織に成功するための資源があり、なすべきことを容易にするプロセスがあり、資源を求めるその他すべての機会の中から、その特定の機会に高い優先順位を与えるような価値基準があるときである。

既存の優良企業が持続的イノベーションをマスターできるのは、持続的イノベーションを優先させる価値基準と、持続的イノベーションに対処するために設計されたプロセスと資源を持っているからである。その同じ既存企業が、破壊的イノベーショを前にして失敗するのは、企業の価値基準が破壊的イノベーションを優先せず、既存のプロセスがなすべきことをする助けにならないからである。
 

<参考文献>
クレイトン・M・クリステンセン (著), スコット・D・アンソニー (著), エリック・A・ロス (著) (2014)『イノベーションの最終解』翔泳社