図7-1. 適切な組織構造と運営主体を見つけるための枠組み
図7-1は、経営者が新成長事業を立ち上げる際、どのような場合に既存の組織能力を活用し、どのような場合に新しい能力を社内で生み出したり、外部から購入したりすべきかを判断する上で役立つ枠組みである。この枠組みは次のような意味を持つ。
<左の縦軸:組織のプロセスとの適合性>
- 組織で現在用いられている、相互作用、意思伝達、連携、意思決定のパターンなどの既存プロセスが、新しい仕事を遂行する上でどれだけ効果的か
- 適合性が高ければ、プロジェクト・マネージャーは既存の機能組織で行われている仕事を連携させるために、既存プロセスを活用できる。
- 適合性が高くなければ、新しいプロセスや連携の方法が必要となる。
<右の縦軸:開発チームの構造>
- 既存のプロセスを活用または排除するための3種類の組織構造
- イノベーションの商品化を担当する開発チームは、「重量級チーム」「軽量級チーム」「機能的組織」として構成することができる。
<上の横軸:商品化を担当する組織の位置付け>
- イノベーションの開発を担当する組織部門にどの程度の自律性が求められるか
- 適合性が低い破壊的イノベーションでは、新事業の開拓や商業化を推進する、自律的な組織を設立することが不可欠だ。
- 適合性が高い持続的イノベーションでは、主流組織の活力や資源がプロジェクトを支えることが期待できるため、スカンク・ワークス*やスピンアウトの必要はない。
* スカンク・ワークス:イノベーションを促すために、柔軟な構造を持つ研究開発組織によって、非日常的な創造の場をつくること
<下の横軸:組織の価値基準との適合性>
- 組織の価値基準が新しい実行計画に必要な資源を配分するかどうか
- 適合性が低い場合、つまりプロジェクトが組織のビジネスモデルにとって破壊的な影響を及ぼす場合は、主流組織の価値基準でプロジェクトに与えられる優先順位は低くなる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社<関連ページ>
イノベーションのジレンマ:第8章 組織にできること、できないことを評価する方法 (11)
イノベーションのジレンマ:第8章 組織にできること、できないことを評価する方法 (12)