55. 負債の本質と分類

負債の捉え方

  1. 「負債 = 他人資本」の場合
    • 「すでに資源を受け入れていること」および「受け入れた資源に対して、外部者が持ち分を有していること」をもって、負債の本質が規定される
  2. 「負債=マイナスの財産」の場合
    • 「将来における経済的資源の流出」が負債の本質となる

近年の傾向

  • 近年は、負債をマイナスの財産として捉える傾向にある。
    • 企業会計基準委員会「財務会計の概念フレームワーク」の負債の定義
      • 「過去の取引または事象の結果として」
      • 「報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す」
      • 「義務、またはその同等物」
    • 経済的資源の流出という将来事象を把握するには不確定な要素が多い
    • 負債の認識は、資源を流出させる義務を負っているか否か、あるいは、その流出が不可避であるか否か、にもとづいて判断しなければならない

負債の分類

  1. 法的債務
    • 確定債務
      • 期日、相手、額がすべて確定している債務
    • 条件つき債務
      • ひとつでも不確定なものがある債務
      • 製品保証引当金
        • 製品の購入者が修理を申し出た際に発生する条件付き債務
  2. それ以外のもの
    • 法的債務には該当しないものの、将来における財産の流出が合理的に予測されるもの
      • 会計的負債として認識される
    • 修繕引当金
      • 設備の利用によって修繕の必要が生じ、修繕を行うことによって財産が流出するという負債
    • このような負債は、期日も、相手も、額も特定されていないが、財産の流出が将来において合理的に予想されるため計上する

流動負債と固定負債

  • 貸借対照表では、負債は「流動負債」と「固定負債」とに分類して表示される
    • 資産・負債を「流動」と「固定」とに分類表示することによって、企業の財政状態はより明確に示される
    • 特別法上の準備金がある場合は、さらに「引当金」の区分が設けられる
  • 流動と固定の分類手順
    1. 正常営業循環に属する支払手形や買掛金が流動負債とされる
    2. それ以外の負債に1年基準が適用される