主流組織の「プロセス」や「価値基準」によって効果的な決定を下せるような状況(主に持続的イノベーション)では、経営幹部の関与はそれほど必要とされない。経営幹部が関与する必要があるのは、主流組織の「プロセス」や「価値基準」が組織内の重要な決定を処理するのに適していないと彼ら自身が判断する場合で、一般的には破壊的イノベーションがこれに当たる。
破壊的事業のための計画を策定する際には、本質的に異なる「価値基準」を用いる必要がある。また主流事業の「価値基準」は、破壊的潜在性を秘めたアイデアを排除するようにできている。このような理由から、破壊的イノベーションは、実力のある経営幹部が自ら直接関与しなければならない状況に分類される。他方、持続的イノベーションは、権限委譲が有効な状況である。社内に適切な「プロセス」が存在する場合はその利用を推奨し、そうでない場合は不適切な「プロセス」や「価値基準」の影響力を遮断することができるのは、経営幹部だけである。
破壊は、会社全体の将来を左右する改良が生み出されている場所に起こることが多い。主流部門のマネージャーには、新たな破壊的事業で生み出されている技術やビジネスモデルのイノベーションについての十分な情報を与える必要がある。加えて、戦略と経営に関する確かな理論を学んだ経営幹部は、持続的あるいは破壊的成長事業を担当するマネージャーたちを指導して、それぞれが置かれた状況に適した行動を取るよう、指導すべきである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社