71. 損益計算書の表示原則

総額主義

  • 収益と費用の総額を表示し、後に利益(損失)を表示するもの
  • 利益の獲得過程を相殺することなく表示するため、企業の経営活動が網羅的に示され、活動規模や利益率などの情報がもたらされる
  • 売上、売上原価、販売費および一般管理費は、企業の主たる営業活動によって生ずる収益と費用であって、対応関係にある
  • 収益と費用は、企業の経営活動を判断する際に最も重要な要素であることから、重要性の乏しいものを除き、総額主義によって表示しなければならない

純額主義

  • 対応関係にある同種の「収益」と「費用」とを相殺し、その差額たる「利益」のみを表示するもの
  • 企業の経営活動の結果である「利益」のみを明示することができるが、その獲得過程は示されない
  • 損益計算書においては、重要性の低い項目など、利益の明示を優先すべき項日こついては純額で表示される
    • 運用益の獲得を目的とする売買目的有価証券は、銘柄の違いは重要ではないことから、「売却益と売却損」「評価益と評価損」を相殺し、純額で表示される
    • 売買目的以外の有価証券の売却損益や、固定資産の売却損益などは、対応関係にないため、相殺は行えない

当期業績主義

  • 損益計算書において、当期における企業の経営活動の結果を示す期間利益を表示しようとするもの
    • 期間利益 = 営業活動や財務活動など、企業が継常的に行う活動
  • 企業の正常な経営活動の結果を示す指標として「経常利益」が表示される
    • 経常利益は臨時的、偶発的な利得や損失の影響を受けないため、当期における経営活動を判断する指標となる
    • 企業の期間比較を行うときにも利用される

包括主義

  • 損益計算書において、当期に生じたすべての「収益、費用、利得、損失」を表示し、当期における「純利益」を表示しようとするもの
  • 臨時的、偶発的な利得や損失を反映した「税引前当期純利益」、そこから法人税等を控除した「当期純利益」が表示される
    • 税引前当期純利益や当期純利益は、企業の正常な経営活動の結果を判断するには適当ではないが、資本(純資産)の増減額を示す最終的な利益である
  • 現在の損益計算書は、基本的には包括主義にもとづいている
    • 区分表示を行うことで、「当期業績主義」と「包括主義」の双方の利点を取り入れている