組織の能力は「資源」「プロセス」「価値基準」という三要素で測ることができる。組織の能力と無能力を的確に評価することで、破壊的イノベーションの成功率を大いに高めることができる。
資源は三要素のうち、最も具体的な要素である。資源には、人材、設備、技術、製品設計、ブランド、情報、資金、それに供給業者や流通業者、顧客との関係などが含まれる。
資源の多くは「資産」であり、雇ったり解雇したり、購入したり売却したり、価値を減らしたり高めたりできる。資源の多くは有形で測定可能なため、価値を容易に評価できる。また資源は概して柔軟性が高いため、組織間で比較的容易に移転できる。
新事業がつまずく原因の多くが、不適切な人材(資源)がリーダーに選ばれたことにあるだろう。企業が「ライトスタッフ(The Right Staff:正しい資質)」に基づいてマネージャーを選ぶと、過ちが起こると思われる。これには、CEOから事業部長、またプロジェクト・マネージャーに至るまで、あらゆるレベルのマネージャーが該当する。
「ライトスタッフ」の属性を持つ人物であれば、リスクの高い新事業も首尾よく運用できるという考えは間違いである。この考えを正すには、モーガン・マッコール教授が主張する「状況に基づく理論」を参考にするとよい。
状況に基づく理論
- 人々が新しい任務で成果をあげる手段であるマネジメント能力と直感は、それまでのキャリアにおける経験を通じて形成される。
- 事業部門が「学校」、マネージャーがそこで取り組んだ問題が、その学校が提供する「カリキュラム」を構成する。
- マネージャーが持っている、または持っていないと思われるスキルは、さまざまな経験の学校で履修した、または履修しなかった「科目」に大きく影響される。
「経験の学校」の考え方では、新事業の責任者として有能なマネージャーや、起業し順調に育て上げた経験を持つ社外の人材を選任するのはリスクが大きい。新しい任務で成功するために必要なスキルを習得したマネージャーを選ぶには、候補者が過去にどのような問題に取り組んできたかを検討する必要がある。問題に取り組むことを通じて、次に同様の問題に直面したときに対処するためのスキルや直観を養った人材を選任するとよい。
人間は、成功より失敗から多くのことを学ぶ。失敗することと、失敗から立ち直ることは、経験の学校の特に重要な科目である。処置を誤っても、その過ちから立ち直ることを通じて直観を養えば、次からは地雷原を通り抜けられるようになる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社