イノベーションへの解:第10章 新成長の創出における経営幹部の役割 (8)

ステップ2:アイデアを適切な形成プロセスおよび資源配分プロセスへ導く経営幹部を任命する

優れた破壊的成長エンジンを作るためには、CEOまたは同等の自信と権限を持った経営幹部による、入念な指導が必要である。また「経営幹部による監督」という取り組みが特に重要なのは、成功がまだ「プロセス」よりも主として「資源」の働きによってもたらされる初期段階である。

新事業を会社の既存プロセスから免除してやり、新しいプロセスの開発が必要だと宣言する。そして、資源配分において各事業の状況や企業全体のニーズに適した判断基準が用いられるよう取り計らうことができるのは、権限を持つ経営幹部をおいて他にいない。

経営幹部は、破壊的イノベーションの理論に精通していなければならず、また破壊的潜在性を持つアイデアと、既存の持続的向上の軌跡上で活用されるべきアイデアとを区別して考えられなければならない。また破壊の足がかりを築くのに適したアイデアを、その成功率を最も高めるようなプロセスに、確実に注ぎ込むという責務を持っている。

経営幹部が果たすべき役割は、時と共に変わる。初期段階の責務は個々の成長事業の個々の決定を監督、指導することだが、やがてアイデアを収集・形成し、資金を配分するためのプロセスを監視し、指導と訓練を続け、環境における風向きの変化に目を配ることが任務となる。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社