破壊的イノベーションを成功させるためのプロセスが生まれていない状況で、破壊的事業を成功に導くのは「経営幹部が自ら行う監督」という資源である。
経営で悩む経営幹部に必要なものは次の3つである。
- 状況に基づく「経営幹部関与の理論」
- 経営幹部の直接的関与が成功の決め手となる状況
- 権限を委譲すべき状況を見分ける方法
大規模な組織の上層部は、下層のマネージャーが開示しようと決めた情報のほかは、あまり多くを知ることができない。中間管理職が上層部の意思決定サイクルに何度か立ち会うと、どのような数字を示せば上層部から承認を取りつけられるかを学習する。そして上層部に承認させるために、手元にある情報の中から自分たちが推し進めるプロジェクトに都合のよい情報のみを報告する。持続的イノベーションでは、経営幹部とマネージャーの間に「情報の非対称性」が存在する。
破壊的潜在性を持つ事業は、規模こそ小さいものの、戦略が容易に定式化できず、利益目標も厳しいため、成否を分ける重要な決定が驚くほど頻繁に求められる。しかも、こうした決定を正しく下すためのプロセスがない。これに対し、優良企業の大規模な事業には、ニーズのはっきりした既存顧客がいて、そのニーズを満たすための精緻化された資源配分および生産プロセスがある。このような組織では、実績あるプロセスが秩序正しく機能することによって、適切な意思決定がなされる。持続的イノベーションでは、上層部が関心を払わずともうまく機能する意思決定プロセスが、成功の鍵となる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社