“企業資金が良い資金なのは、堅調に成長を続けている間だけ” という事象を「成長投資のジレンマ」という。上層部は既存事業で実行される持続的イノベーションが、投資家の予想を上回る実績をあげると信じているため、新規事業において無消費と対抗する間は、創発的戦略プロセスを進める猶予を与える。
成長投資が困難になるのは、成長が減速するとき、つまり持続的イノベーションだけでは投資家の期待を満たすには不十分であることを経営幹部が悟るときである。企業がイノベーターに新事業の急成長を求め、成長に必要なことを行う余裕を失うと、企業資金の性質が変わる。
経営幹部が中核事業の成長鈍化を放置すれば、新成長事業は「企業全体の売上と利益の伸び率を高める」という大きな責任を負わされ、非常に速く非常に大きくなることを要求される。その結果、企業資金は成長事業にとって毒薬となってしまう。
投下資本を無駄にしない唯一の方法は、それが良い資金であるうちに使う、つまり本業がまだ十分健全で、成長を気長に待てるような状況で投資することである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著) (2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版:技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社