115. 短期安全性分析

経営の安全性

  • 企業の状況を把握する際には、利益(または利益)が重要視される。
  • 利益に注目することは重要ではあるものの、それだけでは企業の実態を正確にとらえることはできない。
  • 黒字倒産では、利益は上がっているものの、支払能力や資金の余絡がないために経営が成り立たなくなってしまう。
  • 企業経営を継続するためには、利益だけでなく経営の安全性にも注目する必要がある。
  • 収益性分析および安全性分析は、経常分析におけるいわば両輪である。

安全性分析

  • 貸借対照表を中心として財務的な面での安全性について行う分析。
  • 企業経営を継続するための資金的な側面における余裕度を知ることができる。
  • 安全性は、短期的な安全性と長期的な安全性とに分けてとらえることができる。

短期安全性分析

  • おおむね1年以内の支払い能力。
  • 代表的な指標である「流動比率」は、企業の短期的な債務の支払い能力を判断する際に用いられる。

流動比率

  • 流動資産を流動負債で除したもの。
  • 1年以内に返済すべき債務に対して、1年以内に現金化可能な資産がどの程度あるのかを示す指標。
    • 流動資産とは、現金預金、売上債権、棚卸資産等の1年以内に現金化しうる資産。
    • 流動負債とは、仕入債務や短期借入金等の1年以内に返済しなければならない負債。
  • 流動比率は高ければ高いほど望ましいが、一般には200%がひとつの目安とされている。
  • この比率は業種によって望ましいレベルが違う。
  • この比率が高い状態にあっても、それが必ずしも安全な状況を意味しているとはいえない。
    • 流動資産のかなりの部分が売上債権や在庫によって占められ、販売代金の回収が順調に進んでない場合や在庫が不良在庫化している場合には注意を要する。
    • そうした場合は、売上債権回転期間や棚卸債権回転期間を考慮しながら、良否を判断することが望ましい。
  • 流動比率が低い場合であっても、すぐには問題にならないこともある。
    • 長期的な取引関係にあるメインバンクがあれば、充分なパックアップが見込める。
流動比率 = ( 流動資産 / 流動負債 ) × 100 (%)

当座比率

  • 企業の規則的な支払能力がどの程度あるのかを示す指標。
  • 当座資産を流動負債で除したもの。
  • 流動比率をさらに詳細に検討するために、現金回収可能性の高い当座資産を用いる。
    • 当座資産とは、流動資産から棚卸資産を差し引いたもの。
    • 現金預金、売上債権、有価証券といった即材に監禁可能な資産。
  • 在庫は、実際に販売しうるかどうかが不確実なため、この指標においては除外される。
  • 当座比率は、流動比率に比べてより厳密に短期的な支払い能力を分析することができる。
  • 当座比率は100%程度が望ましいというひとつの目安がある。
当座比率 = ( 当座資産 / 流動負債 ) × 100 (%)

インタレスト・カバレッジ・レイシオ

  • 利息支払能を示す指標。
  • 支払利息が営業利益と受取利息等の合計額の何倍にあるかを示すもの。
  • 本業による利益、すなわち営業利益と財務による収益(金融収益)との合計額を支払利息で除したもの。
  • 利息を支払うのに充分な利益が生み出されているかどうかを判断することができる。
  • この比率は高ければ高いほどよいが、一般には3倍以上が望ましいとされている。
インタレスト・カバレッジ・レイシオ = ( 営業利益 + 金融収益 ) / 支払利息 (倍)