破壊的事業の刺激的な成長が始まるのは、イノベーションが向上して、既存企業の製品に取って代わるときである。初期のイノベーションに対して、この成長を「持続的向上」という。持続的向上は、収益性のさらに高い顧客のニーズを満たすために背伸びをすれば実現する。
ローエンド型破壊者にとってのマーケティング上の課題は、低コストのビジネスモデルを上位市場にまで拡張し、収益性の高い顧客が片づけようとしている用事をこなす製品にも適用することである。他方、新市場型破壊における挑戦は、上位市場に向かう経路を作り出すことである。上位市場への破壊的行進を続けるためには、「用事」を基にした細分化方式による適切な改良を選択することが鍵となる。
表3-1の例が示すように、市場区分に基づいて製品を定義すれば、顧客が片づけたい用事をうまくこなすことができない。市場区分に基づいた製品は、見分けのつかない万能型になりかねない。
製品別の市場 | 人口統計的属性別の市場 | 片づけるべき用事別の市場 | |
---|---|---|---|
市場定義 | 無線ハンドヘッド機器市場 | 出張しがちな営業マン | ちょっとした時間の合間を有意義に使うこと |
競争相手 | パームのパイロット ハンドスプリングのトレオ ソニーのクリエ HPのジョルダナ コンパックのアイバック 携帯電話 |
ノートブックパソコン 固定インターネット・アクセス 固定電話 携帯電話 |
携帯電話 ウォール・ストリート・ジャーナル CNN工アボート・ニュース 退屈なプレゼンを聞く 何もしない |
追加すべき機能の候補 | デジタルカメラ Word Excel Outlook 音声電話 スケジュール管理ソフト 手書き文字認識 |
無線インターネット・アクセス(データ送受信のための回線容量) ダウンロード可能なCRM データ機能 オノライン旅行代理店への無線アクセス オンライン株式取引 電子ブックや電子マニュアル 電子メール 音声電話 |
電子メール 留守番電話 音声電話 見出しニュス(頻繁な更新) 単純な人遊びのゲーム 常時オン |
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社