「製品がどのような用事をするために雇われているか」を理解し「うまく片づけられずにいる用事にはどのようなものがあるか」を知ることができれば、イノベーターは、顧客視点から見た真の競争相手を打ち負かすためのロードマップを手に入れることができる。そして、顧客が抱える用事のあらゆる側面に向けて製品を改良することができる。
成長とは「顧客が特定の用事を片づけるために、不満を感じながらも時折雇っている他の分野の製品」からシェアを奪うことで生まれる。そして製品の新たな成長は「無消費」の中に潜んでいる。無消費と対抗することは、どの用事も満足にこなせない万能型の製品がはびこる世界において、最大の成長を生み出す方法である。
新成長事業を構築するにあたり、ターゲット顧客が片づけようとしている用事を突き止めることが最初に必要になるのは、新市場型破壊への参入点(破壊のための足がかり)となる最初の製品やサービスを模索するときである。破壊的製品の標的を「多くの人が片づけようとしているが、これまでどのような製品もうまくこなせなかった用事」に絞ることができれば、それを最初の足がかりとすることができる。そして持続的な向上を行うことで、その後も成長し続けることができる。
新市場型破壊では、最初から製品導入のあらゆる側面を正しく捉えることは無理かもしれない。しかし「片づけるべき用事」というレンズがあれば、「顧客がやがて価値を認める製品と同じ路線の初代製品」をもって、市場に参入することができる。
新市場型破壊の足がかりとなる「人々が片づけようとしている用事に近い初代製品」を素早く市場に出すためには、観察や聴取を通じて顧客が片づけようとしている用事を見極めるとともに、迅速な開発と素早いフィードバックを戦略的に行う必要がある。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社