破壊的事業を計画する際、イノベーションのアイデアに破壊的戦略としての可能性があるかどうかを判断するために、3つのリトマス試験をクリアしなければならない。
最初は、アイデアが「新市場型破壊」の戦略に成り得るかを検討する。次の2つの質問のうち少なくとも1つ(一般的には両方)の回答がYESでなければならない。
[ リトマス試験1 ]
- これまで金や道具やスキルがないという理由で、これをまったく行わずにいたか、料金を支払って高い技能を持つ専門家にやってもらわなければならなかった人が大勢いるか?
- 顧客はこの製品やサービスを利用するために、不便な場所にある施設に行かなければならないか?
もし「これまではスキルや金を持つ人だけが、不便な場所にある施設でしか利用できなかったもの」を「技術開発によって、スキルや金をそれほど持たない大勢の人でも手軽に所有し利用することができる」のなら、そのアイデアは「新市場型破壊」の戦略として形成することができるだろう。
次の質問が満たされるのであれば、そのアイデアには「ローエンド型破壊」の可能性がある。
[ リトマス試験2 ]
- 市場のローエンドには、性能面で劣る(が十分良い)製品でも価格が低ければ喜んで購入する顧客がいるか?
- そうしたローエンドの顧客を勝ち取るために必要な「低価格でも魅力的な利益を得られるようなビジネスモデル」を構築することができるか?
一般にローエンド型破壊を可能にするイノベーションは、低い粗利益率でも魅力的な利益を実現するための「間接費を削減する改良」と「資産を早く回転させるための製造プロセスやビジネス・プロセスの改良」の組み合わせであることが多い。
イノベーションのアイデアが「新市場型破壊」または「ローエンド型破壊」の条件を満たしたなら、今度は第3のリトマス試験をクリアしなければならない。
[ リトマス試験3 ]
- このイノベーションは、業界の大手企業すべてにとって破壊的だろうか?
もし一社もしくは複数の大手プレーヤーにとって持続的イノベ ーションである可能性があれば、優良企業の勝算が高く、新規参入者の勝つ見込みはほとんどない。
上記のリトマス試験をクリアできなかったアイデアは、破壊的戦略として形成することはできない。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社