[ 新市場破壊 ]
新市場型破壊の製品は従来品に比べれば手頃な価格で入手できて使いやすいため、新しい顧客が手軽に購入して利用するようになる。このことから、新市場型破壊は「無消費(消費のない状況)」に対抗するものと捉えることができる。
新市場型破壊は、当初その独自のバリュー・ネットワークのなかで「無消費(消費のない状況)」と対抗するが、性能が向上するにつれ、主流のバリュー・ネットワークの顧客を、最も要求の甘い階層から始めて、次々と新しいバリュー・ネットワークの中に引きずり込むようになる。新製品を使う方が便利だと気付いた顧客を主流市場から引きずり出し、新市場へと引きずり込むのである。
新市場型破壊では競争相手が「無消費」であるため、既存の優良企業は破壊が最終段階に至るまで、痛みも脅威もほとんど感じない。そして優良企業は、新市場型破壊に直面すると攻撃者を無視するように仕向けられる。これが「イノベーションのジレンマ」に陥る原因となる。
[ ローエンド型破壊 ]
ローエンド型破壊とは、主流のバリュー・ネットワークのローエンドに端を発する破壊である。主流のバリュー・ネットワークの下層にいる、最も収益性が低く、ニーズを過度に満たされた顧客を攻略することができれば、ローエンド型破壊が成り立つ。
優良企業にとってローエンド型破壊は、最も魅力の薄い顧客を摘み取ることで成長した、単なる低コストのビジネスモデルのように見える。高い収益性が求められる優良企業にとって、ローエンド型破壊者から逃げ出さず、立ち向かうことは非常に難しい。そのため優良企業がローエンド型破壊に直面すると、攻撃から逃走するよう動機付けられる。これが「イノベーションのジレンマ」に陥る原因となる。
[ ローエンド型破壊と新市場型破壊のハイブリッド ]
図2-4に示すように、破壊的イノベーション・モデルの第3軸はローエンド型破壊と新市場型破壊を両極とする連続体である。このことから、破壊的イノベーションは「ローエンド型」と「新市場型」のハイブリッド(混成)であることが多い。
図2-4. さまざまなバリュー・ネットワーク
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社