図2-1. 破壊的イノベーション・モデル
図2-1は、『イノベーションのジレンマ』で特定した破壊的イノベーションの3つの要素を示したものである。図2-1では、顧客が利用可能な性能を一本の点線で表しているが、これは既存の主流顧客のニーズを満足させる技術の水準を示している。急な傾きの2本の実線は、技術進歩の速度が顧客の利用能力が向上していくペースよりも速いことを表している。主流顧客のニーズを今ちょうど満たすような製品を作っている企業は、将来、同じ顧客の利用能力を追い抜いてしまう。
持続的イノベーションは、従来製品よりも優れた性能で、要求の厳しいハイエンドの顧客獲得を狙うものである。持続的イノベーションによる競争は、最高の顧客により高い利益率で売れるより良い製品をつくる競争であるため、優良企業には参戦する強力な動機と十分な資源が備わっている。
他方、破壊的イノベーションは、現在手に入る製品ほどには優れていない製品やサービスを売り出すことで、その軌跡を破壊し、定義し直すものである。一般的に、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にアピールし、シンプルで使い勝手がよく安上がりな製品を提供する。
破壊的製品がいったん新しい市場やローエンド市場に足がかりを得ると、改良のサイクルが始まる。そして技術進歩のペースが顧客の利用能力を上回ると、以前は不十分だった技術がやがて十分に向上し、要求水準が高い顧客のニーズを満たすようになり、その破壊的イノベーションはやがて既存企業を追い詰める軌道に乗る。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社