確かな理論は、次の3つの段階を経ることで構築される。
- 理解の対象となる現象を記述する
- 現象をいくつかの区分に分類する
- 現象を引き起こすのは何か、そしてなぜかを説明する理論を明確に打ち出す
理論構築は反復的なプロセスである。研究者や経営者は、この3つの段階を繰り返しながら、どのような状況下で、どのような行動が、どのような結果を生じるかを予測する能力を精微化していく。
上記の「2. 現象をいくつかの区分に分類する」において正しく分類することが、有用な理論を構築する上で鍵となる。正しく分類するとは、属性などの切り口で「相関関係」を明らかにするだけでなく、成功事例の背後にある根本的な「因果のメカニズム(因果関係)」まで明らかにすることである。
破壊的成長の予測可能性の基盤ができ始めるのは、同じ因果のメカニズムが予測と異なる結果(特殊な事例、アノマリー)を生じるのを発見したときである。アノマリーの発見を機に、その状況の中の何が原因となって、同じメカニズムから異なる結果が生じたのかを解明していくことができるからである。
産業や製品、サービスなどに基づく分類体系は、確かな理論の基盤にはなり得ない。確かな理論においては「属性」ではなく「状況」で区分する。相互に重複がなく全体として漏れがない(MECE: Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)状況の区分を明らかにすることができれば、何が、何を、なぜ引き起こすかを明らかにし、それが状況に応じてどのように変化するかを予測できるようになる。また状況に応じた方法で考え、行動する能力を培えば、物事を予測可能を高めることができる。
信頼できる理論の絶対条件とは、どのような行動が成功を導くかという言明のなかで「企業の置かれた状況の変化に応じて、事業や製品・サービスがどのように変化するか」が説明されていることである。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社