イノベーションへの解:第7章 破壊的成長能力を持つ組織とは (12)

2. 新しいプロセスを作る

新成長事業において新しいプロセスを生み出さなければならない場合には、ハーバード・ビジネス・スクール教授のキム・クラークとスティーブン・ホイールライトが提唱する「重量級チーム」が必要になる。
 
重量級チームでは、機能別組織から引き抜かれた人々が組織の壁を超えて、異なるペース、異なる組織集団で、これまで扱わなかった問題に協力して取り組むことができる。重量級チームは新しいプロセスや、協力して仕事を行うための新しい方法を生み出す手段である。これに対して、機能別に構成された「軽量級チーム」は、既存プロセスを活用する手段である。

ハーバード・ビジネス・スクール教授のキム・クラークとスティーブン・ホイールライトが定義する「重量級チーム」は次のような特徴を持つ。

  • 専任メンバーが同じ場所で働く。
  • 各チーム・メンバーの任務は、チームの「統括マネージャー」としてプロジェクト全体の成功の責任を担い、さまざまな機能別組織から集まったメンバーの意思決定や業務に積極的に関与する。
  • プロジェクトを完遂しようとして力を合わせるうちに、新しい方法で交流し、連携し、意思決定するようになる。
  • それらの活動は、そのうちに新しいプロセスや能力となって、新事業を継続的に成功させ、やがて制度化される。

メンバー間に次のような関係が成り立っている場合は

  • 互いに期待されている成果を明確に提示できる
  • 互いの成果を計測して検証することが可能である
  • 片方の行動とそれに呼応してもう一方が取らなければならない行動との間に、予測不能な相互依存関係は存在しない

彼らは一定の距離を置きながら円滑に連携できることから、同じチームに属する必要はない。この関係が成り立っていない場合は、すべての予測不能な相互依存関係を、重量級チームの中に取り込まねばならない。このとき、重量級チームの境界線(許容範囲)をモジュール型インターフェースのある場所まで広げれば、チームが業務に取り組むうちに、協力して仕事に取り組むための新しい方法が生まれ、後に「プロセス」として体系化されていく。

新製品開発の責任者間における相互作用や意志疎通や連携のパターンは、やがて製品のアーキテクチャ内で「各構成要素が相互作用するパターン(製品開発プロセス)」として定着していく。アーキテクチャが世代を越えて不変であるような状況では、こうした習慣的プロセスは、成功のために必要な相互作用を促す。だが、開発担当組織がアーキテクチャを大幅に変更しなければならない状況では、多様な人が多様な問題について多様なタイミングで相互作用する必要があるため、習慣的プロセスは成功を阻害してしまう。

重量級チームが成功するためには、メンバー全員が同じ場所で仕事をする必要がある。メンバーは機能別組織から得た専門知識をチームに持ち込むが、機能別組織の代表という訳ではない。たとえチームの行動方針がそれぞれの所属する機能別組織にとって望ましくなくても、プロジェクトを成功させるために必要なことをしなければならない。

経営幹部が、組織がそれまで直面したことのない新しい課題を重量級チームに与えれば、彼らはまったく新しいプロセスを構築することができる。重量級チームが同様の課題に繰り返し取り組んでいくと、この新しいプロセスがチームに定着し、やがて組織全体に浸透していく。
 

<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社