組織は「プロセス」の中に、持続的イノベーションの能力を生み出していく。持続的技術への投資は、性能向上やコスト削減を通じた利益率改善につながることから、優良企業の価値基準にも適合する。
他方、破壊的イノベーションは不定期に生まれるため、これに対処するための慣例的なプロセスを持っている企業は存在しない。また、一般的に破壊的製品は販売単位当たりの利益が少ないため、破壊的イノベーションはリーダー企業の価値基準に合わない。
優良企業は、持続的技術でも破壊的技術でも成功できるだけの「資源」を持っているが、「プロセス」や「価値基準」が、破壊的技術を成功させる取り組みでは、優良企業も無能力にしてしまう。対して規模の小さな破壊的企業は、新興の成長市場を追求する能力に長けている。資源が不足しているが、小さな市場を受け入れる価値基準があり、販売単位あたりの利益が小さくても対応できるコス卜構造を持っている。
新成長事業を構築する経営者の仕事は、適した「経験の学校」に通ったマネージャーを配置することだけではない。新成長事業の構築に適したプロセスを持ち、そこでの活動を優先させる価値基準を持つ組織に、新事業を任せることが求められる。イノベーションのための要件が、運営組織のプロセスや価値基準と適合していなければ成功しない。
「資源 – プロセス – 価値基準」の枠組みを用いると、どのような変革のマネジメントについても検討することができる。変革を行うためには、新たな「資源」や「プロセス」、そしてときには新たな「価値基準」を生み出すことが必要になる。どのような種類のイノベーションにも、画一的なプロセスや組織をやみくもに当てはめることをしなければ、新成長事業を成功させる可能性を大幅に高められる。
<参考文献>
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・ライナー (著) (2003)『イノベーションへの解:利益ある成長に向けて』翔泳社